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Kiro入門ガイド:AWSの新しいAIコーディングツール

Kiro入門ガイド:AWSの新しいAIコーディングツール

AWSは静かにKiro IDEをリリースしました。これはGitHub CopilotやCursorとは根本的に異なるアプローチを採用したAIコーディングツールです。何かが動作するまで延々とプロンプトを繰り返すのではなく、Kiroは**仕様駆動開発(spec-driven development)**を導入しています。これは、コードを書く前にアイデアを明確な要件、システム設計、実装タスクに変換する構造化されたワークフローです。

重要なポイント

  • Kiroは仕様駆動開発を使用し、コーディング前に構造化されたドキュメントを作成
  • エージェントフックがテストやドキュメント作成などの反復タスクを自動化
  • ステアリングファイルがセッション間で永続的なプロジェクトコンテキストを維持
  • Kiroは現在Claude Sonnet 4.0と4.5をサポートし、品質とパフォーマンスのバランスを取るためデフォルトでAutoモードが有効

Kiroの違い:仕様駆動 vs. 雰囲気コーディング

ほとんどのAI IDEは、Kiroが「雰囲気コーディング(vibe coding)」と呼ぶ方法に依存しています。プロンプトを入力し、AIがコードを生成し、改善し、繰り返す。これは単純なタスクには有効ですが、コンテキストが失われ、決定事項が文書化されない複雑なプロジェクトでは破綻します。

Kiroの仕様駆動開発はこのダイナミクスを変えます。仕様セッションを開始すると、AIは3つのドキュメントを作成します:

  • requirements.md: EARS記法による受け入れ基準を含むユーザーストーリー
  • design.md: 技術アーキテクチャとコンポーネント関係
  • tasks.md: 個別の追跡可能な実装ステップ

このアプローチは複雑なプロジェクトで真価を発揮します。数学的アルゴリズムを使用したフラクタル可視化アプリを構築する場合、仕様プロセスがその複雑さを管理可能な部分に整理します。シンプルなCRUDインターフェースを作成する場合は、速度を優先してvibeモードを選ぶこともできます。

Kiroを際立たせるコア機能

バックグラウンド自動化のためのエージェントフック

エージェントフックは、反復的な開発タスクに対するKiroの答えです。これらのインテリジェントトリガーは、ファイルの保存、関数の作成、APIの変更などのIDEイベントに基づいて自動的に実行されます。

// 例: ファイル保存時にユニットテストを自動生成
// .kiro/hooks/test-generation.yamlでの設定
{
  "trigger": "onFileSave",
  "filePattern": "*.js",
  "action": "generateTests",
  "output": "tests/${filename}.test.js"
}

CursorやWindsurfの手動ワークフローとは異なり、フックはバックグラウンドで継続的に動作します。ドキュメント生成フックを一度設定すれば、すべてのAPI変更が自動的に文書化されます。

永続的コンテキストのためのステアリングファイル

他のAIコーディングツールがセッション間でプロジェクトの規約を忘れてしまう一方、Kiroのステアリングファイルはコードベースに関する永続的な知識を維持します。コーディング標準、推奨ライブラリ、アーキテクチャの決定事項を.kiro/steering/ファイルに保存し、ファイルパターンに基づいて条件付きで読み込むことができます。

---
inclusion: fileMatch
fileMatchPattern: "src/**/*.tsx"
---
# Reactコンポーネント標準
- TypeScriptで関数コンポーネントを使用
- データ取得にエラーバウンダリを実装
- アトミックデザイン原則に従う

外部ツール用のMCP統合

Model Context Protocol(MCP)統合により、Kiroをデータベース、API、ドキュメントシステムに接続できます。ClineやTrae AIのような専門ツールと比較するとまだ基本的ですが、このネイティブサポートにより、IDE内で直接PostgreSQLデータベースにクエリを実行したり、APIスキーマを取得したりできます。

現実:モデル、価格設定、制限事項

モデルの利用可能性

KiroはClaude Sonnet 4.0と4.5モデルで動作します。Autoモードはパフォーマンス向上のためにタスクを両者間でインテリジェントにバランスさせます。GPT-4やGeminiのサポートがないため、Cursorよりも柔軟性は低いですが、Claudeの機能に最適化されています。

価格体系

Kiroは2025年10月1日に無料プレビューを終了し、クレジットベースのプランを導入しました:

  • Pro: 月額$20、標準制限付き
  • Pro+: 月額$40、より高い制限と優先アクセス
  • Power: 月額$200、エンタープライズ規模の使用向け

超過分はクレジットあたり$0.04で請求されます。価格設定はCursorの階層と一致していますが、マルチモデルの柔軟性よりも構造化開発を重視しています。

既知の制限事項

早期採用者は以下のような問題点を報告しています:

  • ターミナル統合の問題: コマンドは実行されるが、完了が常に登録されるわけではない
  • 限定的な拡張機能サポート: Open VSX互換性はあるが、CursorやWindsurfのインポートは不可
  • アクセス制限: 待機リストコードが必要で、ピーク時の使用には厳しい制限

実践的ワークフロー:プロトタイプから本番環境まで

典型的なKiroワークフローの進行は以下の通りです:

  1. vibeモードから始める - 迅速なプロトタイピングのため、動作する概念実証を構築
  2. 複雑さが増したら仕様モードに切り替える - Kiroに要件と設計を生成させる
  3. ステアリングファイルを設定 - チームの規約と標準のため
  4. エージェントフックを設定 - テスト、ドキュメント、コード品質チェックのため
  5. MCPを使用 - スケールアップ時に本番データベースとAPIを接続

この構造化されたアプローチは、プロトタイプから本番システムへ移行するチームに特に有益です。ドキュメントと一貫性が動作するコードと同じくらい重要な場合に効果を発揮します。

代替ツールよりもKiroを選ぶべき場合

Kiroを選ぶべき場合:

  • 明確なドキュメントが必要な複雑なプロジェクト
  • 速度よりも構造化されたワークフローを重視するチーム
  • コンテキストの永続性が重要なコードベース
  • Claudeモデルを多用するプロジェクト

CursorやWindsurfを使い続けるべき場合:

  • 迅速な反復と実験
  • マルチモデルの柔軟性が必要
  • 既存ツールとの確立されたワークフロー
  • 成熟したコミュニティサポートが必要なプロジェクト

結論

AWS Kiroは、開発者がAI支援開発においてより多くの構造を求めているという賭けを表しています。仕様駆動開発アプローチとエージェントフック、ステアリングファイルの組み合わせは、本番システムを構築するチームにとって魅力的なワークフローを生み出します。

ターミナルの問題や限定的なモデルサポートには対処が必要ですが、Kiroの基盤—混沌としたAIコーディングを文書化された反復可能なプロセスに変える—は、他のAIコーディングツールが取り組んでいない実際の問題を解決します。ワークフローを適応させる意欲のあるチームにとって、Kiroは速度と品質の両方を維持しながらプロトタイプから本番環境への道を提供します。

プレビュー期間は、構造化されたAI開発がチームのニーズに適合するかどうかを評価する機会を提供します。AWSの支援とAnthropicとの直接的なパートナーシップにより、Kiroの軌跡は今後の継続的な改善を示唆しています。

よくある質問

Kiroはコード生成前に要件、設計仕様、タスクリストを含む構造化されたドキュメントを作成しますが、従来のAIアシスタントは正式な計画段階なしにプロンプトから直接コードを生成します。

いいえ、Kiroは現在Claude Sonnet 4.0と4.5モデルでのみ動作し、デフォルトでAutoモードが有効になっています。GPT-4、Gemini、その他のAIモデルのサポートはなく、Cursorのようなツールと比較して柔軟性が制限される可能性があります。

エージェントフックは、ファイル保存や関数作成などのIDEイベントに基づいてタスクを実行する自動トリガーです。テスト生成やドキュメント作成などの反復作業をバックグラウンドで自動的に処理します。

Kiroはドキュメントと構造が必要な複雑なプロジェクトに最適です。迅速な実験やシンプルなスクリプトの場合、仕様駆動アプローチは従来のAIコーディングツールと比較して不要なオーバーヘッドを追加する可能性があります。

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